水蒸気改質法による水素製造プラント・装置について

水蒸気改質法(Steam Reforming)は、工業的な水素製造方法に於いて一般的な方法として用いられています。主に、天然ガス(メタンやプロパン)を原料として、高温の水蒸気と触媒反応させることで水素を製造します。製造した水素は用途に応じて、PSAやメンブレン(膜)を用いて純度を高めて(~99.999%)使用します。

以下に水蒸気改質法の仕組みやプロセスの詳細を説明します。

水蒸気改質法の仕組み

水蒸気改質法は、主に以下の化学反応を通じて水素を生成します。

1.改質反応(原料ガスと水蒸気の反応)ここではメタンを例に説明します。

反応式:CH4​+H2​O→CO+3H2​

 この反応は、吸熱反応となり高温(約700~1000℃)で行われる操作です。

2.水性ガスシフト反応(COと水蒸気の反応)

  反応式:CO+H2​O→CO2​+H2​

 この反応は発熱反応となり(約200~450℃)で行われる操作です。

化学反応全体でみると、1分子のメタンから、合計4分子の水素を得ることが可能です。

プロセスの詳細

水蒸気改質法は以下の流れで進行します。

1.天然ガスの精製プロセス

 原料となる天然ガスには、硫黄などの不純物が含まれる場合が有ります。

 硫黄分は、後段で使用される触媒に永久被毒のダメージを与え、性能に大きく影響を与えることから、「脱硫器」などを用いて精製することが重要です。

2.蒸気発生プロセス

 改質反応に用いる水蒸気を製造します。水(純水など)を所定の圧力・温度まで上昇させて水蒸気を製造します。改質反応に用いる場合には、過熱蒸気の状態になるまで加熱を行います。飽和蒸気の状態であると、触媒に影響が出る可能性がある為、十分な検討が必要です。

3.改質反応プロセス

 精製された天然ガスと高温高圧の水蒸気を、十分にミキシングして「水蒸気改質器」に供給して水素を製造します。ここで生成される主要なガスは水素(H2)と一酸化炭素(CO)となります。水蒸気改質法による、心臓部であるため、水蒸気改質器の設計は非常に重要なものとなります。

4.水性ガスシフト反応プロセス

 改質反応で生成された一酸化炭素(CO)と水蒸気を「CO変成器」に供給して、更に水素(H2)と二酸化炭素(CO2)を生成します。水性ガスシフト反応プロセスは、水蒸気改質法によるプロセス全体の効率を高めるとともに、毒性ガスである一酸化炭素(CO)の濃度を下げるメリットがあります。

5.水分除去プロセス

 改質反応プロセスと水性ガスシフト反応プロセスの後に、ガス中に含まれる水分を除去します。ここでは、「冷却器」や「凝縮水分離層」などを用いて、ドライ状態(飽和)まで水分除去を行います。

6.水素精製プロセス

 水蒸気改質法にて生成されたガスは、混合ガス(水素、一酸化炭素、二酸化炭素、メタンなど)の状態となります。用途に応じて水素を分離し、純度を高める為に精製を行います。一般的には圧力変動吸着法(PSAやVPSA)を用いて、純度を~99.999%まで高めて使用します。

当社では、水蒸気改質法を用いたプラント全体の設計はもとより、プロセスを構成する個別機器の設計や製作も対応しております。