水素製造装置に求められる安全対策について

水素は非常に軽く、拡散性が非常に高く、広い可燃範囲と低い着火エネルギーを持つために適切な安全対策が必須と言えます。

水素の性質から求められる安全対策について概要を説明します。

水素の基本的性質

可燃範囲(空気中)      4~75Vol%

着火エネルギー        約0.02mJ(静電気で着火)

自然発火温度         約530℃

比重(空気を1として)    約0.07

水素製造装置の安全対策

水素製造装置に求められる安全性

水素製造装置に求められる、代表的な安全対策を以下記します。

  1. 製造した水素を漏洩させない
  2. 仮に漏洩した場合には早期に検知し、拡大を防ぐ
  3. 仮に漏洩した場合に留めない
  4. 漏洩した水素に火が着くことを防ぐ
  5. 火災が発生した場合、火災の拡大を最小限に留める

構造面での安全対策

装置本体及び、装置内の配管等は使用前に窒素などを用いて気密漏洩検査を実施し、水素が漏洩しないことを確認必要が有る。

併せて、水素の滞留を構造的に防ぐために装置上部に換気装置を設け、常時換気することを検討する必要が有る。

水素ガス漏えいに対する安全対策

ガス漏えいに対する対策は非常に重要で有り、適切な場所に水素ガス用ガス検知を設置し、漏えいが生じた際にはすぐに検知し、適切な措置を講じる必要が有る。

漏えいを検知した際には水素を滞留させないために、必要に応じて装置を停止させたり、系内を窒素パージするなどして安全な状態にする必要が有る。

異常事態に対する安全対策

装置を運転させる際、制御系にてインターロックを組み込むことにより、安全対策を講じる必要が有る。

インターロックは装置の特性から「軽故障」と「重故障」に分類する。

故障発生時には、警報ランプの点灯や、警報ブザーを動作させることで異常を事前に発見できるようにする。

重故障発生時には、警報ランプの点灯及び警報ブザーを動作させると同時に装置を自動で停止させる動作を組み込む必要が有る。

以下に、インターロック条件と動作の一例を示す。

軽故障条件原料ガス供給圧力異常(H,L)
計装Air圧力異常 (H,L)
パージ用窒素圧力異常(H,L)
冷却水流量異常 (H,L)
装置内各部圧力異常 (H,L)
装置内各部流量異常 (H,L)
装置内各部温度異常 (H,L)
軽故障動作警報ランプ点灯
警報ブザー動作
重故障条件ガス漏えい
地震
装置内各部圧力異常 (HH,LL)
装置内各部流量異常 (HH,LL)
装置内各部温度異常 (HH,LL)
重故障動作警報ランプ点灯
警報ブザー動作
緊急遮断弁動作
装置内パージ

水素はその特性を深く理解し、適切な安全対策を講じることで安全に製造することが可能である。

今回は一例を示していますが、装置の特性や設置する場所の環境を十分に考慮して安全対策を講じることが肝要といえます。